ポスター

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アレッサンドロを刺しつらぬく ロレンザッチオの剣 (上)
「炎の剣」を手に持つ正義の神 スヴァントヴィト (右)
海の攻撃』 裏表紙 (ミュシャ)から (1922年)

高さが2メートルを越える『ロレンザッチオ』のオリジナル・ポスターは室内に飾るには大きすぎるため、90センチほどの小さな版が販売用としてのちに作られた。

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ミュシャ・コラム
「寄せ集めのミュシャポスター

シガリロ・パリ Los Cigarillos Paris

ロレンザッチオ      1896年 リトグラフ

初期のデッサン

はじめての男役
 16世紀のフィレンツェを舞台にした歴史劇『ロレンザッチオ』のポスター。アルフレッド・ミュッセ (Alfred Louis Charles de Musset 1810-1857)の戯曲を改作した1896年12月上演時のポスターです。『ロレンザッチオ』で初めて演じた男役が成功してサラ・ベルナール(Sarah Bernhardt 1844-1923)ハムレットにも挑戦します。
 ロレンザッチオはロマン派的人物の代表といわれ、作品とロレンザッチオの性格には作者ミュッセとジョルジュ・サンド
(George Sand 1804-1876 作家、思想家、フェミニスト運動家。ショパンともマジョルカ島、パリで同棲していた時期があった。)の恋が投影されています。 
ゆれる心
 左上の6つの赤い丸はフィレンツェを支配したメディチ家の紋章で、丸薬を計量するためのスプーンをデザインしたものです。薬種業から始まったと伝えられるメディチ家の成り立ちを示しています(医薬を表す「medicine」という言葉に今も生きている)。背景の文様もフィレンツェ特産の豪華な織物を連想させます。画面のデザインでフィレンツェをあらわし、ロレンザッチオの運命、逡巡、復活、正義などを伝えるミュシャらしい巧みな表現です。
 フィレンツェのシンボルに襲いかかるドラゴンは、ロレンザッチオのいとこでもある暴君アレッサンドロ公爵の邪悪を示しています。
 ロレンザッチオは町と市民を救うため、また自分の名誉のために、身内の公爵を殺すべきか思案するポーズで描かれ、S字形のポーズはロレンザッチオのゆれる心を表しています。
 S字形の造形はアール・ヌーヴォーの特徴でもあります。

炎の剣
 画面下の枠では、ロレンザッチオの剣が邪悪な公爵を刺しつらぬいています(柄(つか)が同じなのでロレンザッチオの剣とわかります)。金色にゆらめく剣は正義を示す「炎の剣」です。
 アレッサンドロを襲う機会をうかがうために公爵と常に行動を共にしていた ロレンザッチオは、アレッサンドロを成敗してフィレンツェを救ったにもかかわらず、フィレンツェ市民からは公爵の仲間と誤解されて暗殺されます。しかしアレッサンドロを刺しつらぬく「炎の剣」がロレンザッチオの正義を明らかにしています。
 物語の状況、時代、場所、人物の心情、展開などを1枚の画面で伝え、演劇への興味を掻きたてる優れたポスターです。