文楽 木版 絵はがき集 斉藤清二郎 画
「莫邪 ばくや」(古浄瑠璃首 こじょうるり かしら)
奥州安達原 一つ家 老女岩手
信州伊那谷の伊豆木(長野県飯田市伊豆木)に伝わる江戸中期頃の名品首。凄愴味あふれる造形は、古浄瑠璃首特有の誇張と省略が素晴らしい。
「莫邪」の名は1729年竹本座初演「眉間尺象貢(みけんじゃくぞうのみつぎ)」に登場する刀鍛冶、干将と莫邪夫婦に由来する名であり、刀の銘でもある。物語は中国春秋時代、呉越春秋の逸話にもとづいている。
近年、中国で春秋時代越王勾践の青銅刀が発掘され、鋭い切れ味を2500年経てなお保っていたことが話題になった。
老女の首(かしら)
文楽には、老女の役に遣う首(かしら)が数種あり、造形の特徴によって世話、時代、また善良、悪役と使い分けていたのが時代を経るにつれて固定化した。
「時代の婆 じだいのばば」
菅原伝授手習鏡 道明寺 覚寿
近江源氏先陣館 盛綱陣屋 後室微妙
上品さと気丈さをそなえた老女。遣い手にも貫禄が求められる。
「世話の婆 せわのばば」
双蝶々曲輪日記 引窓 与兵衛の母
摂州合邦辻 合邦内 合邦女房
地味な役柄であるが、舞台には老巧な遣い手が求められる。
「悪婆 わるばば」
心中宵庚申 八百屋 八百屋の母
暁烏六花曙 山名屋 遣り手おかや
鬘 胡麻のひっくくり(ごまのひっくくり)
現存せず(1945年3月 戦災のため焼失)
写真 入江泰吉 (写真家 1905-1992)
「悪婆 わるばば」
心中宵庚申 八百屋 伊右衛門女房
暁烏六花曙 山名屋 遣り手おかや
意地悪く下卑た世話物の姑婆に用いる。
「莫邪 ばくや」
奥州安達原 一つ家 老女岩手
伊賀越道中双六 円覚寺 母鳴見
時代物の凄惨剛悪な妖婆に用いる特殊首。